日経225先物の情報観覧ならこちら
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「無料」という言葉や表現のインパクトなどに惑わされずに、物事をキチンと数字で考えることができるかどうか、それが数字のセンスだ。
そして、そのセンスがあれば、「だったら逆に、確実に安くなる5%割引を選んだほうが得だ」と、理論立てて物事を選択することもできる。
飛行場のチケット販売機において、1日に数百人もの「当選者」が確実に出るわけであり、その当選を目の当たりにした目撃者たちによって、キャンペーンはさらに口コミで広がっていった。
全日空に鞍替えした利用者も多く、このキャンペーンによる利益は数十億円ともいわれている。
みんなが均等に安くなる「2%割引」などといったキャンペーンを実施するより、はるかに効果があったことはいうまでもない。
さて、数字のセンスとは別に、「数字に強い」「数字に弱い」といった表現を耳にすることがある。
私は、会計士という職業柄か、「数字にお強いんですね。私なんかめっぽう弱くて」などといわれることがよくあるが、この場合の「強い」「弱い」とはいったいどういったことを指すのだろうか?
おそらく、多くの人がイメージする「数字に強い人」とは、方程式をサクサク解くことができたり、ワリカンのひとりあたまの金額を暗算で計算できたりする人、つまりは数学が得意な人のことを指すのだろう。
逆に、「数字に弱い人」とは、足し算・引き算くらいならできるけど、それ以上のレベルの計算は苦手で、数字を見ると苦手意識、はたまた拒否反応が先行してしまうような人のことをいうのだろう。
しかし、そういった意味でいうならば、私も足し算・引き算くらいしかできない。
むかしからずっと文系人間で、数学の成績は中ぐらいであった。
2次方程式は苦手だったし、まして微分積分なんてチンプンカンプンだった。
だから、数字に強いなどといわれると、くすぐったくなってしまう。
もちろん、会計士という仕事は常に数字との格闘である。
決算書を読むにしろ、報告書を書くにしろ、そこにはかならず数字が登場する。
しかし、その数字を複雑な方程式に当てはめたり、暗算で計算したりすることはまずない。
やることといえば、99%は足し算・引き算・掛け算・割り算(加減乗除)であり、その際にも必ず電卓を使用する。
電卓といえば会計士の3種の神器のひとつ、なくてはならない愛すべき存在なのである。
たとえば、財務分析でいちばん大切なのは、電卓で引き算と割り算ができることである。
どういうことかというと、会社の状態を見るうえでいちばん注目しなければならないのは、「去年との比較」である。
「去年よりいくら売り上げが増えているのか?」「去年より何パーセント利益が増減しているのか?」という視点から分析するのが大切なのである。
今年の売上高-去年の売上高=売上高の増加額今年の利益÷去年の利益×100=去年比(パーセント)ここで必要となる計算は、引き算と割り算、そしてちょっとした掛け算である。
これらは、日常的に会計監査の現場で使われている。
だから、会計士に必要な数学的スキルは加減乗除のみだといい切ってしまってもよい。
「数字に弱い(数学が苦手な)人」でも、会計士として活躍することは十分に可能であるし、逆に、「数字に強い(数学が得意な)人」が必ずしも優秀な会計士になるわけでもない。
そもそも、ほとんどの人は、日常生活の場で加減乗除以上の計算をすることなどない。
だから、数学が苦手でもいっこうにかまわないし、そのことで生活に支障をきたすようなことなどないはずだ。
数字に弱くても、センスがあればいいだから、数学を専門にするわけでもない普通の人たちにとって必要なのは、「数字に弱くても、センスはある」ということではないだろうか。
数字に強くなる必要などまったくなく、センスさえ持ち合わせていれば、世の中のいろいろなことに惑わされずに済む。
たとえば、無料という言葉に過剰反応してせっかくの割引を無駄にしたり、保険の見直しの巧妙な数字トリックにひっかかったりしないようになる。
たいてい、そういったキャンペーンの立案者は、抜群に鋭い数字のセンスを持ち合わせているし、数字にもめっぽう強い。
口悪くいえば、数字に弱くてセンスもない大衆をいかに効率よくひっかけるかということに日々頭を使っている人たちなのだ。
さて、数字のセンスさえ持ち合わせていればいいといっても、実際にどうやってそのセンスを磨けばよいのか、よくわからないというのが正直なところだろう。
物事をキチンと数字で考えることができるかどうかがセンスの有無を分ける境目になるといったが、その説明だけではいまいちピンとこないはずだ。
そこで、ここでは、私の大学時代の話をもとに、もう少し具体的に数字のセンスについて考えてみたい。
優秀な経営者には別の数字が見えている私と数字のセンスとの出会いは、会計の勉強をはじめるずっと前の大学時代にさかのぼる。
若いときにはだれしも、師匠と呼べる人物、最近流行りの言い方でいうと「メンター私の場合、ユダヤ人大富豪とかスイス人銀行家といったすごい人物がメンターだったわけではないが、自分にとっては同じくらいすごいと思った地方の学習塾経営者がその人であった。
「学習塾の経営で成功するためにいちばん大切な要素はなんですか?」という私の問いに、生徒数とか授業料設定とか講師の質とかではなく、「生徒の安全だよ」と答えた方である。
いちばん大切なのは人命。
塾の経営者から聞けるとは思っていなかった言葉であった。
さて、当時そこでアルバイトをしていた私は、「院長」と呼ばれていたその経営者からいろいろな話を聞く機会に恵まれていた。
あるとき、院長は私に1枚のチラシを見せながらこういった。
「ライバルの○○ゼミナールのチラシだが、これを見てどう思う?」そこには《公立トップ高校に120人合格!市内6教室にて展開!》と大きく書かれていた。
そこで私は、「3桁の合格者数はインパクトがありますよね。
教室数の多さも保護者に『大手だから安心』という感じを植えつけられますし。
やはり大手は強いですね」ともっともらしく答えた。
ところが、院長は首を横に振った。
「違うな、山田くん。
120人合格はたしかに多いが、1教室あたりに直すと20人だ。
うちは1教室しかないが40人の合格者を出しているのだから、うちのほうが合格者ははるかに多い」
「大手なのにたいしたことなかったんですね」
「それに、去年この塾は5教室で、今年1教室増えて6教室になったが、合格者数はほとんど増えていない。
ということは、力が落ちてきているということだ」
おそらくこれが、私と数字のセンスとの最初の出会いであった。
「分析とはこうするものなのか」とはじめて知ることができたのだ。
つまり、まずは割り算をすることで「1単位あたりいくらか」を出す。
そして、去年と「比較」して力の流れを見る。
これは、決算書の分析でも同じ、「分析の基本型」である。
どの数字に着目すべきか?また、すべての数字を割ったり比較したらいい、というものではない。
ポイントとなる数字だけに着目することが大事になる。
塾業界なら、それが合格者数や教室数であった。
合格者数は生徒数に比例するものなので、売り上げの予測につながる。
また教室数は、多額の賃貸料や人件費と比例するため、経費総額の予測につながる。
院長は会計に強いわけでもなんでもないが、経験からそのことを知っていたのである。
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